狭さ・騒音・規制を超える

内装

東京など都市部でクリニックを開業する際、最も大きな課題となるのが「設計上の制約」です。限られた敷地面積や厳しい法規制、周囲の騒音環境など、郊外とは異なる複数の要素が同時に立ちはだかります。

しかし、これらを“ただの制限”と捉えるのではなく、“設計で価値に変える”視点を持つことで、都市ならではの魅力的なクリニック空間を実現できます。

本コラムでは、都市部のクリニック設計における主な制約と、それを乗り越えるための具体的な設計工夫、実際の事例を交えてご紹介します。


1. 狭小地でも広く見せる!空間効率を最大化する設計術

都市部では30坪未満のテナントでの開業が一般的です。中には20坪台で耳鼻咽喉科や皮膚科を開業するケースもあります。
狭小空間でも快適で機能的なレイアウトを実現するためには、限られた面積を最大限活用する工夫が求められます。

主な工夫
  • 一筆書きの動線計画:患者とスタッフの動線を交差させず、スムーズな流れを実現
  • 天井の高さを活かす:吹き抜けや間接照明で開放感を演出
  • 収納の壁面化・天井化:床面を使わない“見せない収納”の工夫
  • 共用部の活用:テナントビルの共用トイレや廊下を設計計画に組み込む

実例:
東京都内の心療内科では、受付・待合・診察室・処置室を「回遊できる動線」で結び、限られたスペースでもゆとりある空間を実現。ガラスパーティションと間接照明で圧迫感を軽減しています。


2. 騒音・振動への配慮:快適性を左右する静けさの設計

都市部では隣接する飲食店や道路交通、上階の事務所からの音・振動が避けられません。静けさが求められる内科や心療内科、美容医療などでは、患者満足度に直結します。

主な工夫
  • 遮音材・吸音パネルなどによる音環境対策
  • 水回り・空調設備の配置見直しによる振動源の分散
  • 隣接テナントとの間にバッファゾーン(倉庫・トイレ等)を設ける

実例:
東京の美容皮膚科では、隣が飲食店であったため、遮音シートを壁に追加。さらに診察室には吸音材を設置し、静かな診療空間を実現しました。


3. 採光・換気の工夫で「閉塞感ゼロ」な空間づくり

ビルインクリニックや路面店舗では、採光や換気に不利な物件も多く、窓のない部屋が生まれがちです。
しかし、素材や照明、空調設計を工夫することで、明るく快適な環境は実現可能です。

主な工夫
  • 反射性の高い素材(白壁、ミラー、艶のあるタイル)の活用
  • 間接照明+スポット照明による自然光に近い光環境
  • 高性能な換気システムとCO₂センサーの導入

ポイント:
感染症対策としても換気は今後さらに重視される要素。設計初期から空調・設備業者と連携することが重要です。


4. 都市部特有の法規制を見据えた設計戦略

東京都内を含む都市部では、建築基準法、消防法、保健所対応などの法的ハードルが高く、開業スケジュールや設計プランに影響します。

よくある課題
  • 用途変更の可否(前テナントが飲食・物販だった場合など)
  • 診察室の設置制限(面積や避難経路の条件)
  • 火災報知設備の義務化(消防設備の追加設計が必要)

対策:
医療施設設計に精通した建築士との早期連携が不可欠。法規制に基づいた設計は、時間とコストのロスを大きく減らします。


5. 外観とブランディングの工夫で“選ばれる”クリニックに

都市部では、前を通る人の視線やSNS映えも集患要素のひとつです。しかし、テナントビルでは外観・看板に制約があるケースも多いため、デザイン面でも工夫が求められます。

工夫のポイント
  • 受付や入口にシンボリックなロゴや照明演出を配置
  • ビル共用部に許容範囲でサイン設置
  • デジタルサイネージで訴求力を高める

実例:
千代田区の整形外科では、外壁広告が不可だったため、受付周辺にロゴを立体的に配置。洗練された空間はSNSでも話題となり、自然な集患につながっています。


まとめ:制約の多い都市部だからこそ、「設計力」が差別化に

都市部のクリニック設計には、面積、音、光、法規制など多くの制約があります。しかし、それらを乗り越えるための工夫こそが、クリニックの個性や強みに直結します。

「ただの機能性」ではなく、
「選ばれる理由をもった設計」を。

設計・内装でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。都市型クリニックに特化した私たちの経験で、理想の空間づくりをサポートいたします。