「居抜き物件」とは、什器や備品などの設備、机や椅子などの家具を、今あるそのままの状態で売買または賃貸借されることを指します。飲食店舗に多く存在し、キッチンやカウンターバーなどの設備がついた物件がよく流通しております。
同様にクリニックにも居抜き物件が存在し、医師の高齢化や後継者がいないことで閉院を余儀なくされ手放された物件の家財や設備をそのままクリニックとして活用します。
居抜きクリニックのメリット
クリニックの新規開業には、内装工事の他に机や椅子などの設備の他に医療機器やスタッフ制服や備品に至るまで、用意するものは山のようにあります。
医療設備には、電子カルテ、X線、内視鏡、院内家具、照明、カーテン、空調機器など様々ありますが、全てを一から調達しようとすると、何百万円単位でも足りないほど高額になります。医療機器に加え、その他の設備が残っているのであれば大きく費用を抑えることできます。
行政上の許可通りやすく手続きが簡易
クリニックを開業するには、搬入が完了したあとで行政による立ち入り審査が必ず行われます。床材や手洗い場など細部までチェックされ、その検査で不備がないと判断されれば、次のステップに進むことができます。居抜き物件であれば、過去に一度審査を通過している実績があるので問題なく許可が降りる可能性が高いです。
スケルトンからの場合、様々なヌケモレが発生し、不足を補う対応をとる必要があるので、ここをスムーズにパスできると大きな時間短縮となります。
前クリニックの患者様が見込める
以前のクリニックが高評価であったり、知名度が高かったりした場合、以前の利用者も再び訪れてくれる可能性が期待されます。
一度閉院になっているので転院しているはずですが、自宅近くに再度開院となれば、戻ってこられる患者様もいるはずです。地元の患者様を確保しておけるのは、開業するクリニックにとっては強みとなります。
居抜きクリニックのデメリット
レイアウトの変更が出来ない
居抜きクリニック物件での開業は、元からある物件を使用することになるため、レイアウトは前院と同じ状態となります。医療機器もそのままあるので、内装の大幅レイアウトは返って新規開業より費用がかかってしまう場合もありますので注意が必要です。コストを抑える代わりに、内装も含めて自由度が下がるという点がデメリットです。
前クリニックの印象を引き継ぐ
以前のクリニックの評判が高ければ、集客などへの好影響が期待できますが、逆に評判が低かった場合には、そのままマイナスイメージが受け継がれてしまいます。すると、悪い印象を持たれたままの開業にならざるを得ません。その場合には新規での開業以上に、集患に困難が生じる可能性もあります。
設備が古い可能性がある
居抜き物件の場合には、かなり築年数が古くなっていることもあり、長い期間放置されていると、医療設備機器が古く使い方や保証がないものがあります。医療機器に不備があるようであれ、当然修理を施す必要があります。使えない機器が多数あるようでしたら破棄するしかなくなりその費用(処分費用)も発生し新しく購入する機器代金も発生するので結局高くなることもありえます。そうした機器が複数あれば、結果的に初期費用が高くなる可能性もあります。
居抜きクリニック物件の選び方
以上のように居抜きクリニックには、メリットもデメリットもあります。せっかく初期費用を抑えようと居抜きクリニック物件を見つけれても、修繕にお金がかかる様であれば元も子もありません。
そのメリットを最大限享受するためには、居抜き物件が優良物件なのかそうでないかを見極めるために、以下のポイントに特に注意するようにしましょう。
■必ず自分の目で設備や医療機器、院内を細部までチェックする
■周辺環境や立地条件は問題ないか実際に確認する
■前のクリニックの評判や閉院理由を確認する
必ず自分の目で設備や医療機器、院内を細部までチェックする
必ず1回は自分の足で訪問しましょう。その上で、医療機器や設備について、自分の目や手で確認することが大切です。その際に機材などがリースで組まれている可能性もあります。権利の継承についても事前に確認を取るようにしましょう。
また患者さんの目線で医院の中を見てまわり、導線を確認し、患者さんにとって不都合はないか、過ごしやすい空間であるかなどを確認しましょう。
周辺環境や立地条件は問題ないか実際に確認する
最寄り駅からの徒歩のアクセスの距離や分かりやすさに問題点はないか、診療時間内い騒音の発生はないかなど、クリニックの周辺環境や立地条件を確認しましょう。クリニックがストレスを感じにくい立地にあるかどうかは、集患に重要なポイントです。
前のクリニックの評判や閉院理由を確認する
先ほどデメリットでも述べた通り、クリニックの評判が高ければ、集客などへの好影響が期待できますが、逆に評判が低かった場合には、そのままマイナスイメージが受け継がれてしまいます。
また、閉院理由が経営不振であった場合、その理由が明確であるならば改善の余地がありますが、立地が問題の場合は避けたほうが良いでしょう。
さいごに
居抜き物件でのクリニック開業には、初期費用を大きく抑えられたり、審査の難易度が下がったりと様々なメリットがあります。しかし、既に用意されている設備や機器が古い場合には、修理費などの支出が上回り、結果的にコストが増大することもあるので、注意が必要です。
居抜き物件でのクリニック開業を検討する際には、実際に自分で現地に出向き、メリットとデメリットを確認した上で、判断するようにしましょう。