クリニックにも求められるユニバーサルデザイン

内装

ユニバ―サルデザインとは

ユニバーサルデザインとは、直訳すると「普遍的・万人向けのデザイン」です。身体能力や年齢、国籍、性別に関わらず、すべての人が使いやすいデザインのことを指します。

介護施設や大きな病院では広がりつつあるユニバ―サルデザインですが、個人のクリニックでも取り入れられつつあります。老若男女あらゆる属性や心身の地域住民が訪れるクリニックだからこそ、どんな人も直感的に使えるユニバーサルデザインは取り入れてたいデザインです。

ユニバーサルデザインの原則

  • 全ての人が利用できる「公平性」
  • 自分に合った方法を選べる「自由度」
  • 簡単に利用できる「単純性」
  • 即座に理解できる「わかりやすさ」
  • 危険がない「安全性」
  • 少ない力でも利用できる「体への負担の少なさ」
  • 使いやすさを担保する空間「スペースの確保」

全てを満たす必要はなく、上記いずれかを満たしたデザインのものを作ることが大切です。

バリアフリーとの違い

上記のユニバーサルデザインの原則を見ていると、バリアフリーと似ていることに気づくのではないでしょうか。

バリアフリーとは、階段の横にスロープをつける、段差をなくす、手すりをつけるといったように、高齢者や障がい者などが若者や健常者とのハンディキャップを埋めるために、物理的な障害を取り除くデザインです。一方、ユニバーサルデザインは高齢者や障がい者だけではなく、全ての人の利用を想定したデザインです。

では具体的に見ていきましょう。

クリニックで求められるユニバーサルデザイン

呼出番号表示

診察室の前や待合に大きな画面で、順番を数字で表示します。

ただ診察室から名前を呼ばれるのを待つだけでは、後どれだけ待ち時間があるのだろうと苛立ったり、少し席を離れたいが、その間に名前を呼ばれたらどうしようそわそわしてしまいます。そこで、大きな画面で番号を表示する事で、待ち時間の予測がたつことで気持ちに余裕が生まれたり、聴力の弱い人でも自分の順番を認識する事が出来ます。

また、番号表示にすることでクリニック側の業務の効率化することができ、フルネームを呼ぶ必要がなくなるので個人情報保護の観点からも利用者にとっても安心性が高まります。クリニック、患者様側双方にメリットがあると考えられます。

分かりやすい案内表示

案内表示ではデザインの良さも大切ですが、ユニバーサルデザインとしては「遠くからでも視認しやすい」「誰でも見える・読める」ことを前提とする必要があります。

文字
ユニバーサルデザインでは遠くから見る文字の書体は「ゴシック体・太字」が基準として定められ、太めの文字でも読みやすいよう、文字間隔も広めに開けることを推奨しています。

配色
色覚障害のある方や高齢の方は、同系色を見分けることが出来ないため、表示板の地色と文字・図の色は明確に分けて、誰でも識別できる配色を推奨しています。

③取付位置
診察室の出入口等に壁から突き出して付ける「室名サイン」は取付高さ2mを基準としているように、案内表示の取付位置として、身長や姿勢、車椅子使用などに関わらず、誰もが見やすい位置の基準が定められています。

ピクトグラムの使用

ピクトグラム
情報や指示、案内などを単純化された絵や図形で表したもの。「絵文字」「絵記号」「図記号」などと訳される。言語によらず情報を伝達することができ、街頭や施設内での案内などによく用いられる。

ピクトグラムがよく使われる院内サインとして、トイレ(男性用・女性用・ユニバーサル)やエレベーター、進行方向の矢印、妊婦(妊娠の可能性がある人含む)などが挙げられます。

このように院内に設置する案内標識にピトグラムと組み合わせることで、一目で用途や目的が判別でき、視覚を通してイメージしやすくなります。また、誰にとっても見えやすいものであるよう、大きな文字であること認識しやすい色であることも重要です。

音を組み合わせる

患者様には視覚が弱い方もいらっしゃいます。文字や絵の代わりとなるのが音です。
ここがお手洗いです、ここがエレベーターです、など音声案内があることで、利便性が高まります。大きな病院ほど、多言語音声にするのがおすすめです。

高さへの配慮

エレベーターのボタン位置で、車椅子利用者用があるように、受付、記入台、扉の手すり位置も低い高さのものを採用しましょう。車椅子利用者だけではなく、子どもも自分で使うことができます。

その他

自動ドアや点字ブロック、センサー付き蛇口といった、クリニックに関わらずよく目にするこれらもユニバーサルデザインの代表例です。力を加えること無く、誰でも安全かつ快適に利用できます。

さいごに

ユニバーサルデザインは介護施設のみならず、個人のクリニックにも広まってきています。筋力の弱った人や怪我をしている人、障がいのある人など多種多彩な人・物が移動するクリニックには、さまざまな条件を受け入れサポートする機能のある建材が求められます。

限りある予算の中で、全てをユニバーサルデザインを様々な箇所に採用していくのは難しいかもしれませんが、すべての人に使いやすい施設を目指して、設備や内装デザインの見直しをしてみてはいかがでしょうか。