大まかなスケジュールを把握する
「開業」と一口に言ってもその準備の工程は膨大で多岐に渡ります。開業までには多くの書類の作成や業者とのやりとりなど、不慣れなことをいくつもこなさなければいけません。まずは早い段階でおおまかな流れを把握し、スケジュールを計画する必要があります。
具体的にどのような流れで開業するのか、一般的なスケジュールの目安を確認していきましょう。細かいスケジュールは開業形態や地域によって異なりますが、大まかには次のようなものになります。
※スケジュールは目安です
クリニック開業までに必要な期間は、ケースによっても異なりますが、 新規開業の場合は少なくとも9か月程かけて準備するのが一般的です。
上記の時間の他に、経営理念や開業方針を練る時間を含めると1年ほどかかります。どんな病院を開業したいのかを明確にすることで、開業までの流れをスムーズに進めることができるでしょう。
ではクリニック開業までの基本的な流れをかみ砕いてみてみましょう。
診療圏調査・物件決定
診療圏調査とは、開業候補地やそのエリアの現在の市場を、客観的に調査するものです。クリニックを開業する場合、まずは開業する候補地をあげ、その土地で競合するであろうクリニックの状況・診療科目の特性を考慮開業地する必要があります。診療圏内にある競合病院や潜在患者数の調査を行ったうえで、最適な場所を選びましょう。
開設手続き
クリニックを開業する場合には、関係各所への書類の提出を含むさまざまな手続きが必要です。
開業手続において、もっとも間違いやすいのが、書類の提出や申請のタイミングです。保健所への事前の相談が遅れれば、厚生局への保険医療機関指定申請の締切日までにクリニックの開設届けを提出することができず開業予定日に開業が出来ないという事例もあります。
届け先と手続きのポイント
1 | 保健所 | テナント契約などの前に、開業する管轄の保健所との事前協議を実施する。「診療所開設届」や必要な添付書類を準備し、開業約1ヵ月前に書類を提出する。 |
2 | 厚生局 | 開業する地域を管轄する厚生局との事前協議を行う。保険医療を実施する為の「保険医療機関指定申請書」や必要な添付書類を準備して、適切なタイミングで提出する。 |
3 | 福祉事務局 | 「生活保護法指定医療機関」の指定を受ける場合には、管轄の福祉事務局などへの事前の相談や、必要書類の提出を行う。 |
4 | 消防局 | 事前に消防署で講習を受講し、放火管理責任者の資格を取得する(開業物件により必須。事前確認が必要)。消防立入検査を受け、場合によっては消防計画の提出、避難誘導訓練等も行う。 |
5 | 税務局 | 「個人事業開始届」「事業所設置届」などを提出する。 |
6 | 医師会 | 事務局に入会条件等を確認し、入会申込を行う。理事会診査等を経て、入会手続きを行う。 |
保健所との事前協議ではクリニックの名称、診療科目を決めておく必要があります。
あとから変更することも可能ですので、仮の名称、大まかな診療科目でも構いません。内装業者が決まり次第、図面を出してもらいましょう。
また病院開業に必要な手続きは、保険診療を行うために必要な手続きだけではなく、診療用エックス線装置備付届や麻薬施用者免許申請書、麻薬管理者免許申請書など、開業する診療科目によって異なります。開業に必要な手続きに漏れがないように確認しましょう。
資金調達・事業計画
クリニック開業時にはかなりの資金が必要です。クリニックの規模や診療科、スタッフ数によって異なりますが、数千万円から1億円以上の金額が必要と思われます。
必要な資金の内訳としては、病院の建設費用や内装工事費用、土地代、医療機器や備品などの購入費、人材確保のための広告費や人件費、医師会の入会費や当面の運転資金などがあげられます。初めからきっちりと金額を決めておく必要はありませんが、金額などは予想のつく範囲や数字を書き出していくことで、少しずつ金額のイメージを持ちましょう。開業後の収益や費用や、資金調達のみを重要視するのではなく、「キャッシュ・フロー(現金収入と支出)」についても確認しておきましょう。
銀行から開業資金の融資を受けることもできますが、融資の相談から融資が実行されるまでには日数が必要なケースがあったり、準備できる自己資金の金額によって受けられる融資額の上限が決まってしまうケースもあります。そのため、ある程度まとまった自己資金を準備しておくことが望ましいと言えます。開業後には融資を受ける事が出来きないので、融資を検討している場合は早めの準備をオススメします。
キャッシュフローを管理するためのご自身のための経営計画や銀行で融資を受けるために必要となるのが事業計画書です。事業計画書を作成するためには、固めたコンセプトから必要とされる医療器械の見積もりを取り、建設内装工事の見積もりを取ることが必要となります。
医療機器の選定・リース契約
開業する病院の施設工事がある程度進んだら、開業する診療科目に応じて必要な医療機器や備品の手配を行います。医療機器を選定する上で、行いたい医療や集患面をよく吟味し、内装設計の段階でコンセントの位置やLAN配線、水回りなどの調整を行います。MRIやCT、レントゲンなどの大きな医療機器を購入する場合は、医療機器メーカーと内装業者とで床の加重計算や搬入経路、電気容量の打合せが必要となります。
場合によっては発注から納品までに時間がかかることもあるため、医療機器や備品を発注する際は、納期を確認したうえで、搬入・設置のスケジュール調整を行いましょう。
また、初めから全てを揃えようとするのではなく、
はじめから医療機器をすべて揃えるのではなく、患者の増加とともに随時増やしていくのもよいでしょう。開業後の節税対策や新しい医療機器の導入による増患効果などで2年先、3年先、5年先のビジョンを持っていると医療機器の選定もしやすくなります。
設計・施工
実際に工事したクリニックの内装デザインやコストを参考に業者を選びます。ただ安ければいいというわけではありません。デザイン・料金も納得のいく業者を探しましょう。
従業員の求人・採用・研修
開業されるクリニックの規模の考え、図面上でスタッフの動線を確認し、配置人数を決めましょう。採用する職種、人数によって運転資金が変わってきます。クリニック様の考え方にもよりますが、パートさんだけでは予定通りには採用できないことが多いため、募集は正社員・パートで募集し、組み合わせで採用を決めていきます。
スタッフの研修は内覧会の日から逆算して、少なくとも2~3週間前に行いましょう。電子カルテの使い方や医療機器の取り扱い方法の説明を医療機器の業者の方がしてくれます。その後に白衣やサンダルなど、スタッフの方の意見を聞きながら一緒に選ぶと親睦も深まりやすくなるでしょう。
ホームぺージ・印刷物
ホームページ制作は、制作会社が依頼をうけホームページをデザイン後、先生に確認していただき修正し、更に確認していただくと言った流れとなっています。意見を交換しながら修正を重ねるので、公開まで最短でも3カ月ほど必要となります。
また、早めにドメインを取得しておくことで、SEOにも効果的と言われています。
内覧会
内覧会の目的は、正式なオープンの前、またはオープン後すぐに、地域の人にクリニックの存在や設備、スタッフを知ってもらう機会を設けることです。クリニックの設備や診療内容を知ってもらう絶好の機会です。
また、院長やスタッフの人柄に触れることで診療方針などを知ってもらい、信頼できるクリニックとして口コミ効果も期待でき、集客への期待となるでしょう。
その他
待合患者用ソファ、診察机、診察台、薬品棚などの購入し搬入を行います。
さいごに
このように、開業にあたってさまざまな工程があり、一人では簡単にできるものではありません。それぞれに専門家に確認しなければいけない点も多数あり、怠るとトラブルにもなりかねません。
自分一人で検討するのではなく、診療準備やスタッフ研修に集中できるよう、実績のあるコンサルタント会社に依頼する事をお勧めします。