近年、SDGs(持続可能な開発目標)や脱プラスチックの流れが加速する中、医療業界においても環境への配慮が求められています。クリニックの内装デザインもその例外ではなく、開業時の設計段階から“地球に優しい選択”が重要視されるようになってきました。本コラムでは、環境配慮型の内装の考え方、選ばれる理由、具体的な素材や事例をご紹介します。
環境に配慮した内装デザインとは
「環境配慮型の内装」とは、単にエコ素材を使うというだけではありません。使用する建材の選定、設備機器の省エネ性能、施工時に発生する廃棄物の削減対策、さらには日々の運用面でのエネルギー効率までをトータルで考慮し、環境負荷を最小限に抑える設計・運用の考え方を指します。
例えば、VOC(揮発性有機化合物)を含まない塗料や接着剤を使用することにより、院内の空気質を改善し、患者様やスタッフの健康リスクを軽減できます。また、断熱性能の高いサッシや自然光を取り入れやすいレイアウト設計は、冷暖房エネルギーの消費を抑えるだけでなく、明るく開放的な空間づくりにもつながります。
クリニックという医療空間においては、「ただ環境に優しい」というだけでは不十分であり、そこに患者様の安心感や居心地の良さ、地域からの信頼性向上といった“人に与える印象”をいかに高められるかも重要です。また、環境への配慮を取り入れた空間は、院のブランドイメージを明確に打ち出すことにもつながり、競合との差別化を図る有効な手段にもなります。
このように、環境配慮型の内装は、単なる設計のひとつではなく、患者様・スタッフ・地域社会・そして地球環境のすべてに配慮した持続可能な空間づくりの一歩と言えるでしょう。
なぜクリニックでも環境配慮が求められるのか
- 社会的責任の高まり
クリニックは地域社会と密接につながる存在です。「環境にも優しいクリニック」であることは、社会的信用やイメージアップにつながります。 - 患者様の意識変化
患者層の中には、環境問題に関心の高い方も増えています。とくに30〜50代の女性層や自由診療系の利用者は、施設選びの際に「理念」や「姿勢」も重視する傾向にあります。 - 採用にも有利に働く
環境に配慮した内装は、スタッフからも好まれる要素の一つです。SDGsを意識した取り組みは、求人においても差別化につながります。
環境配慮型クリニックにおすすめの内装アイデア
1. 天然素材の使用
・壁材:珪藻土、漆喰、天然木材など
・床材:バンブーフローリングや再生素材のビニルタイル
→ VOC(揮発性有機化合物)を抑えた素材を使うことで、空気質の向上にもつながります。
2. 脱プラスチックの取り組み
・受付や診察室の什器に木やアルミを使用
・サインやパーテーションの素材見直し(PETやアクリル→紙系・金属系)
→ 可能な限りプラスチックの使用を減らす工夫が評価されます。
3. 省エネ設計
・自然光を最大限に取り入れるレイアウト
・LED照明+人感センサーによる自動調光
・高断熱サッシや遮熱カーテンの採用
→ 設計段階での工夫により、長期的に電気代や冷暖房費を削減できます。
実際の導入事例(一例)
大阪府内の自由診療クリニックでは、床材にリサイクル素材を使用し、廃棄予定だった家具をリメイクして受付カウンターを製作。院内の照明はすべて調光機能付きのLEDに変更し、紙の診察券を廃止しデジタル化も導入しました。
このように「見た目の美しさ」だけでなく「取り組みのストーリー」が伝わる内装は、SNSなどでの広報活動にも活かすことができます。
環境配慮=コストアップではない
よく「エコ仕様はコストが高いのでは?」と誤解されがちですが、初期費用を抑えながら導入できる選択肢も増えています。たとえば、施工時に出る端材を什器に再利用したり、再生可能素材を取り入れたりすることで、長期的なコストパフォーマンスにも優れています。
まとめ
環境配慮や脱プラスチックは、一過性のトレンドではなく今後の基準となっていく流れです。クリニックとしてこの時代の要請に応えることは、患者様・社会・働くスタッフすべてにとってメリットがあり、結果として選ばれるクリニックにつながります。
設計の初期段階から「環境配慮型」を取り入れ、未来につながる内装デザインを実現してみませんか?